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[承前] 1988年、この指環新演出の年に年末のFMを聴いていて聴いてみたい と思わせた歌手が、ジークリンデを歌ったナディーヌ・ゼクンデだっ た。スピーカーから流れてくる歌声の実に凛としていたこと。 というわけで4年間待ち続けた彼女の声をようやく聴くことができる のである。バレンボイムの指揮は絶好調で、第一幕の前奏曲から全開 で鳴り響いてくる。 幕が開くと舞台奥まで“歴史の道”が長く長く続いている。そんな奥 からジークムントが逃げてきた……地面からトネリコの木は生えてい るが、フンディングの家はない。と思っていると舞台が手前から厚い 表紙をめくるように上がり、その先端にいたジークムントがへりにぶ ら下がってフンディングの家の中に飛び降りた。 視覚的に舞台上にあるべきものが存在せず、客がじれているとぎりぎ りの段階でそれが舞台上に現れてくる……こういうやり方が、クプフ ァー演出の特徴なのだと後で知ったのである。 ジークムントを歌ったのは偉丈夫のポウル・エルミング。見た目は完 璧なジークムントであるが、不思議なことに声のスタミナが今ひとつ で、あれれっと思うとパワーが落ちてきてしまったりするのだった。 ということとはまったく別に、この『ワルキューレ』の一幕は3人の 登場人物――フンディングはマティアス・ヘレ――の見映えが抜群だ ったと今でも思い出すのである。 そしてゼクンデは、十分に期待に応えてくれたのだ。 [続く] 憬話§我々の“バイロイト音楽祭”2008.08 |
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