悼話§高田渡にまつわるあれこれ

フォークシンガーの高田渡が亡くなった。

フォークブーム華やかな70年代半ば頃、訥々とした歌い口に
皮肉な遊びが散りばめられた歌詞。ギター片手に歌いこなす
のが難しい一人だった。

“三条堺町のイノダって”という『コーヒーブルース』に誘
われて、東京~大垣の鈍行を乗り継いで朝早くから営業して
いる「イノダコーヒ」に行った。大学生の頃である。

てっきりアングラ喫茶と思って入ったら。町家の奥にはごく
普通の喫茶店が広がっていて驚いたというか戸惑ったという
記憶……。黙っているとミルクも砂糖も入れて供されるオー
ソドックスなコーヒーを飲んで眠気を覚まし、京都を歩いた。
それから、京都に行く度に必ず寄っては、朝のロールパンと
サラダとコーヒーを頼むのが楽しみとなった。

気がつけばフォークブームも過ぎ去り、この数年テレビでは
懐かしいフォークソング番組もしばしば目にするようになっ
た。そうしたある日、高田渡が出演するのを見た。画面上の
高田渡は五十代半ばであるのに、見た目は七十代の白髪白髭
の老人だった。ただ変わらず淡々とした個性は健在だった。
だいぶお酒をお召し上がりのようだな、とも感じた。

『自衛隊に入ろう』がヒットした時代から既に30年が過ぎ、
海外に自衛隊が出て行って“自衛隊に入って花と散る”とい
う歌詞が現実のものとなりつつある時代に高田渡が逝ってし
まった。

★ひだまりのお話★

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