劇話§感想『野田版・研辰の討たれ』の見方

感想を書くつもりが偉そうなことを書いてしまったので……

感想のようなものを書いてみる。まず全体の感想としては、
5日目でも役者同士の距離感や台詞の流れがスムーズでなか
ったように感じた。あれだけの動きと台詞の量をほんの数日
の稽古で初日を迎えなくてはならない歌舞伎役者は大変だ。
ましてやいつもの歌舞伎芝居ではない。10日も経てば何とか。

残念だったのは、初演で片岡市蔵(当時は十蔵)が演じた小平
権十郎が獅童に代わっていたことである(彼以外はほぼ同役)。
冒頭の道場の場面、赤穂義士の討入りの目撃談では、十蔵の
特徴ある「ほ・が・ら、ほ・が・ら」の何気ない台詞回しや
研辰に謀殺された家老・平井市郎右衛門(三津五郎)を前にし
た「武士が、脳卒中で死んだぁ!」という台詞回しが気に入
っていただけに、平板な獅童の台詞は全体からも引っ込んで
聞こえた。あの味のある台詞と演技がよかったのに。

特に弾けていたのは福助(奥方、およし二役)と三津五郎で、
奥方の「あっぱれじゃ!」はもちろん、およしになってから
の相手役に執拗にまとわりつく(染五郎大迷惑)様は、すっか
り役が自分のものになって遊びがプラスされるようになって
いる。三津五郎の市郎右衛門も、研辰に稽古をつけるところ
から全開で、からくりを白々しくかわす足技もさすがに見事
でさらっていた。扇雀の妹おみねも姉に負けない爆演ぶり。

芝のぶの芸者金魚がまた特筆もののおもしろさ。どうも女形
勢が押し気味か。

クライマックスの群集の残酷さ身勝手さに客席が静まりかえ
り、研辰が唐突に殺される最後は、それまでの舞台の饒舌が
遠い過去のように静謐が支配した。

横たわる研辰を野辺送りするかのように胡弓、琴、尺八で奏
でられる音楽はイタリア・オペラの『カヴァレリア・ルステ
ィカーナ(田舎の騎士道)』間奏曲である。

★ひだまりのお話★

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