劇話§PARCO歌舞伎『決闘!高田馬場』(中)

歌舞伎役者が素材の宝庫であるということを、今回は橘太郎
の絶妙な動きで再確認できた。

詳しい経歴は忘れたが、確か部屋子から名題に昇進したとい
うことで、名題下あたりまでは運動神経に物を言わせた動き
で先代の勘三郎などにもかわいがられていたらしい。残念な
がら彼のトンボや飛び越し……先代勘三に「どこまで飛んで
いくんだよう」と言われたりした……を直接見たことはない
が、今回の舞台で彼のバランス感覚を垣間見た。

……妻に先立たれた藪医者の洪庵(橘太郎)が首吊りしようと
するところに入ってくる安兵衛をごまかすのに、薬箱の上で
胡坐を組んだり、鯱になったりするのだが、その動きがまっ
たくぶれないのだ。しっかり作ってあるだろうが所詮は一抱
えもない小さな薬箱である。体の芯がわかっているんだなと
感心したのだった。そうして見ていると、劇中での橘太郎が
揺らいだりしたことがなかったということに思い至るのだ。

おそらくは殺陣師として八重之助……これまた映像だけの人
である……に連なる系譜の一人なのだろう。残念だったのは
プログラムでの扱いが大きくなかったこと。せっかくのメイ
ン役者の一人なのだから、彼についてもページを割いて触れ
て欲しかった。

サークル“ビール純粋令”推奨協議会

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