劇話§ミュンヘンの『ばらの騎士』-7-

そんなところに“あのオックスが”麗々しくやってくるので
あるが……。

トムリンソン・オックスはもう見事なまでのセクハラ親父と
化して、やりたい放題である。対するダムロウ・ゾフィーも
“何よ、この親父! 話が違うっての”……かなり意訳……
とオクタヴィアンへの殊勝な態度はさっさとすっ飛んで、お
転婆さが露呈する。ルチア・ポップがゾフィーを歌っていた
頃……つまり新演出当時……は、まだまだ殊勝な女の子とい
う扱いだったような気もするが、そういったあたりの手直し
のようなものはどれくらいしているのだろう。

というわけでオクタヴィアンとゾフィーの間に恋愛関係が生
じて、話はもつれファニナル氏はヒートアップする。まあ、
もう少し病弱を押してという風情があればよかったが、時を
待つしかない。

このあたりでようやくオーケストラの音がなじんでしっくり
してきた。オックス男爵お気に入りのワルツで音楽も気持ち
よく伸び縮みはじめて、客席に座っていても気持ちがいい。
いかさま情報屋の片割れアンニーナがオクタヴィアンからの
手紙を渡すシーン、機嫌が直ったオックスが歌うのに合わせ
ての速めの三拍子の音楽の中のヴィオラの下降グリッサンド
もしっかり聴こえてこちらもご機嫌である。

トムリンソン様もご機嫌で、幕切れの最低音も決まり、カー
テンがスルスルと下り始め、最後の最後、一瞬だけオックス
を捉えてさっと閉じる。一幕の閉じ方とはまた違ったこれま
た心憎いのである。
                            [続く]

★ひだまりのお話★

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