劇話§ミュンヘンの『ばらの騎士』-終-

タクシーに乗って走り出したところで、照明が落ちて人気が
なくなった劇場を見上げ、しばしの別れを惜しんだ。次に来
れるのはいつのことだろうか。

旅人であるからよけいセンチメンタルになるのは仕方がない。
在住している人間だったら、同じ顔合わせで次の週にもう一
度観ることはしごく簡単なことなのだ。

そうであるが、旅人であるからこそ一つ一つの上演を感謝し
ながら観ているという思いも大きい。それこそ新国立劇場に
年一か二程度しか通わずに白けている人間がここにいるのだ。
日頃あるものに対しての感謝は希薄なのだ。

戻ったホテルのバーでアウグスティナーの白を1杯。厨房の
火を落としてしまったので、つまみなしで味わって呑む。

日が明ければ、ミュンヘンはワールドカップの1日前という
何となく特別な時にいるという不思議。白ビールはほどなく
吸い込まれて、勘定を済ませ部屋に戻った。

★ひだまりのお話★

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