和話§中学校合唱コンクールの想ひ出

テレビで合唱コンクール本選の様子を見ると、テレビの音声からだけ
では比較のつけようがないくらい出場校の水準が平均して上がってい
るように感じられる。

指導者の力量が明らかに上がっているので、音程からハーモニーから
均質に仕上がっている。……それがまた不満の種でもあるのだ。

思い起こせば、はるか昔に中学校合唱コンクールの県予選に出場した
ことがある。2年生の時に新しい音楽教師が異動してきた。彼が音楽
好きと思われた2、3年生を適当に誘い集めて半年足らずの泥縄練習
をした。各自他のクラブ活動もしていたので、本当に合間の練習しか
できなかった。今の生徒諸君の気合とは雲泥の差である。

課題曲が何だったか覚えていないが、自由曲として教師が選んだのは
『はだか馬に風が吹いた』という作詩:名取和彦、作曲:市川都志春
の作品。歌の出だしが“裸馬の黒い背筋を……”という勇ましいとい
うか荒々しいというか、そんな曲だった。

発声練習もそこそこに曲に取り組んだのだが、合唱の“が”の字も知
らない特に単声の男声パートは、すぐにソプラノの主旋律に引っ張ら
れてしまい、結局男声だけのパート練習に時間を割く結果となった。

その時の3年生の一人は、後に音大に進学するのだが、中学生として
は珍しく響きを伴った低音の出る人で、その人が後ろで歌ってくれる
と、自分達も不十分ながらその声にうまく乗せて合唱に参加できたよ
うな錯覚に陥っていた。

結果は見るも無残というか、何の賞もいただけなかったのは当然のこ
とで、そんなことを思い出しながら、今年もNHKホールからの中継
に見入ったのである。

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