来話§1997年ベルリン国立歌劇場[Ⅲ]

苦手なオペラがいくつかある。音楽的にということと視覚的にという
意味合いでは『サロメ』などがそうで、過去に2回――ミュンヘンの
エファーデンク演出のものを現地と新国で――観たが、題材はともか
くも、この先劇場で実演を観ようという気にはならない。

題材としての『ヴォツェック』は、はっきり実も蓋もなく救いようの
ないものであるが、不思議なことに何度観てもかまわないという演目
である。

そうはいってもなかなか日本での上演機会は少なくて、今回を含めて
実演を観たのは5回という数になる。ただし、その5回もウィーンの
来日公演の2回と、ベルリンのこの上演がを2回、それにベルリン現
地で1回観ている。要するに2種類の演出しか観ていない。

その二つの舞台はどちらがどちらとは言えない、このオペラをどう理
解したらいいのかという示唆がなされていた。

演出のシェロー、指揮のバレンボイム、ヴォツェックのシュトゥルッ
クマン、大尉のクラーク、マリーのマイヤーといった個性の豊な実り
を感じることができた。

とりわけ印象的だったのは、マリーが殺された後の舞台上中央のポツ
リと点った光が、オーケストラの音塊の昂揚とともに徐々に強さを増
していった場面。何がなしの救済を感じた瞬間だった。

★ひだまりのお話★

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