朧話§N響のコンマスになった……夢

“他人が見た夢の話を聞くのはおもしろくない”のだそうである。言
われてみれば、うなずきたくもなりそうではある。と前振りをしつつ
一昨日見た“夢”があまりに克明だったので書いてみる。

何と「N響のコンサートマスターになった」という夢である。既に燕
尾服を着て第一ヴァイオリンの最前列に座り、眼の前のパート譜……
メンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』序曲である……を眺めていると
左に座っている“同僚の”S氏が親切にも「大丈夫ですよ。それから
楽譜は私がめくりますんで」と言ってくれた。ヴァイオリン――友達
のを借りて遊んだことがある程度
――を首に挟んで“出だしの16分音
符はA線から始めるんだよな”と指で押さえて必死に確認作業を続け
ているのである。

それでも微かに正気が残っているようで、心の中で“えーと、弾き始
めるまでに50小節近くもあるのか、数え間違えないようにしないと”
と考えつつ譜面を眺めていると五線譜の右下の大きな記号が見えた。
それがまったく見たこともない意味不明な記号で戸惑ってると、ヴィ
オラ首席でもじゃもじゃ頭のT氏が「どうしたの?」と聞いてきた。
それで、この記号の意味がわからないと言うと、驚いた顔で「えー、
本当に知らないの? こりゃ大変だ」とのたまいながらも意味すると
ころを教えてくれ、最後に苦笑しながら「それじゃあこの先困るよ」
などと軽くおどされてしまった。

そりゃあそうだ。四十代も過ぎて脱サラしてN響のコンマスになって
不安まじりで最前列に座っているのである。……そういえば友人達に
も連絡しなきゃあ……などとぐずぐず考えているうちに、ステージに
はメンバーが揃った。チューニングを始めろと催促されるので、立ち
上がってオーボエに指示を出す。

チューニングが済んで指揮者がまもなく登場というところ、何を焦っ
たのか一人でフライングをして立ち上がってしまった。誰も立たずに
こっちを見ているが“初めてだし、しょーがねーな”という顔をして
全員が立ち上がってくれたところで指揮者が登場。ニコニコと現れた
指揮者はW氏で、握手をしながら「よろしくお願いしますね」と言っ
たのだった。

……おしまい……

注)同僚団員と指揮者はイニシアルで表示しましたが実在してます。

【去年の今日】音話§さよならワレリー・ゲルギエフ…3…

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