気話§拝啓・朝日新聞の吉田純子さま[Ⅱ]

【承前】

クラシックの演奏会における最大の前提は何かと言えば単純かつ明快
です。それは“ステージ上から届く音楽を聴くこと”です。そして客
席からの雑音が最小限であること。

中にはクシャミのように避けられない音もありますが、大抵はちょっ
とした気配り一つで避けられる……膝の上のチラシを落とす……飴の
包装をむく……バッグにつけた“鈴”が鳴る……類のものばかりでは
ないかなと思うのです。

それこそ“たかが小さな鈴一つ”でも、音楽を聴く上での障害になり
得るのですから、その不規則な音源が近くにあろうが遠くで鳴ってい
ようが、集中が途切れる元凶になるのです。

よく「もっとリラックスして聴けば」とか「そんなに集中すると肩が
凝ってしまう」とか「昔のコンサートはもっと気楽に聴いていたので
しょう」といった発言を耳にしますが、気楽に聴きたいのであれば、
わざわざコンサートホールに出向かずとも、それなりの音質でCDな
どの録音を楽しめばいいだけのことです。

実演は、まさに一期一会での瞬間瞬間が生まれては消えていく儚さが
あります。であるからこそ、そこで奏でられる音楽への敬意が必要だ
と確信するのです。

大昔、初めてクラシック演奏会に行った時、まさに“初心者”だった
少年は、他の人に迷惑をかけてはいけないと自然に思い至りました。
不特定多数が集うこのような環境では、個人の行動がいくぶんか制限
されることを認識しなくてはならないということも学びました。
                        
                       【この項続く】

★ひだまりのお話★

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