能話§スター扱いされてスポイルされて

日本ほど“天才”という言葉の乱発される国が他にあるだろうか。

思い返せば20年以上も前のNHK特集がショパン・コンクールを取り
上げ、既に故人となった日本人ピアニスト・Sの、ブーニンに対する
“天才”という一言が日本に“ブーニン・ブーム”を巻き起こしたの
だった。

日本人の多くは、コンクールなどで一位を勝ち取った人間をあたかも
“完成品”であるかのように見做し、元来持っている“旬のもの”を
愛でる性質と合体させてしまい、コンクールがキャリアの出発点であ
るということを完璧にネグってしまっているように感じる。

同じようなことは芸術の分野だけでなく、特にスポーツの分野にも顕
著に見ることができる。それこそサッカーだったら“和製ベッカム”
とか“日本のロナウド”といった見出しで持て囃して、散々スター扱
いをした揚句、ひとたび結果が出せなかったり、モノにならないとわ
かると手の平を返したように背を向けておしまいなのである。

一過性のブームのしっぺ返しは、大相撲にもプロ野球にも、そしてJ
リーグにもあったのだ。

マスコミの“操作”と受け留め手の“無知”がそれを助長するのだ。

大リーグに行ってしまったイチロー、松井、松坂のような選手が稀に
しか輩出しないのだということを、我々はもっともっと冷静に自覚し
なくてはならない。

しかし、そうだとばかりは言えなくて、それこそかつてのカール・ベ
ームやギュンター・ヴァント、朝比奈隆などのような晩年の老指揮者
をとっかえひっかえ狂信的に崇める人達もいたりするのである。

【ひだまりのお話の原点】

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