鼓話§長いことティンパニを……[上]

オーケストラを聴くうえで巨大な影響を与えてくれた一人のティンパ
ニストについて書く。

ティンパニに音程があることはもちろんわかっていたのだが、長いこ
と“景気づけの効果音”としての存在だと思い続けていた。そう思っ
ていた期間のほうが長いかも知れない。

“きっかけはペーター・ホフマン”なのだった。パトリス・シェロー
演出のバイロイト・リングでマッチョな上半身を惜しげもなく披露し
てジークムントを演じたドイツ人テナーは、ルネ・コロ以上に日本に
来ることがなかった。

その彼の初来日がようやく実現したのは1990年4月のことであった。
とにかく理由はわからないが、某クレジットカード会社の創業記念だ
か何だかという訳のわからない名目で、だからチケットも取りにくい
だろうと考えた。運悪くそのカードは持っていなかったので、カード
を持っている知り合いに頼んで代わりに取ってもらったのだった。

そうした事前の奮闘を経て、ようやく“幻のテナー”とご対面したの
だが……。

ああ、ひどかった。はっきり言って思い出したくもないし、もっと言
えばここしばらくはすっかり忘れてしまっていた。音程はあやふやと
かいった次元を超えて、音楽にすらなっていないという様子に満員の
NHKホールの客席は何が起こったのだろうという、実に微妙な空気
が充満していったのだった。

その後、ペーター・ホフマンはパーキンソン病を発症していることを
公表した。どうやら1980年代末期にはそれらしき兆候があったらしく
日本でのステージでの不安定さもそのあたりが原因だったと推測でき
るのだ。

さて、ちっともティンパニの話にならないのだが……と思われるのも
無理はないが、このホフマンがメロメロのステージを去った休憩後に
今回の本題が待っているのである。
                           《続く》

《オーケストラのトピックス一覧》

この記事へのコメント

【篠の風】
2007年04月06日 23:40
"BUNTE" というゴシップ雑誌の最新号の表紙に Peter Hofmann が3度目の結婚式に向かう姿が掲載されています。パーキンソン病に冒された現在62歳の彼の姿は無惨です。言われなければ彼だとはまったくわからないでしょう。
2007年04月09日 12:59
コメントをありがとうございます。

“ブンテ”のHPに行ったら、記事の
概要がありましたが、表紙は見つか
りませんでした。

パーキンソン病とはいえ、本人にし
ても不本意なキャリアの終わり方だ
ったと思います。

が、……3回目の結婚ですか。

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