書話§エンペドクレスのサンダル

突然、表題の言葉を思い出した。

高尚な哲学の話題とかではなく、もうちょっと下世話な小説の中での
他愛のない会話からである。ネタ本は庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけ
て』
という今から40年近くも前の芥川賞作品。

主人公である薫君の“ガールフレンド”の由美は、何かと薫君に仕入
れた知識を披瀝したがるのだ。それで小説の中の話題が“エンペドク
レスのサンダル”だったのである。

「ねえ“エンペドクレスのサンダル”って知ってる?」
「・・・・・・」

と始まってエンペドクレスが“純形而上学的悩み”で自殺した最初の
人間で、火山に飛び込むのに火口縁にサンダルがきちんと揃えられて
いたのだという。そのことを知っている薫君は、さらに解説を付け加
えて、由美のご機嫌を損じ「舌噛んで死んじゃいたい」とまで言わせ
るのであった。

まあ、そんな他愛のない小説の件を40年近くも覚えているのだから世
話はない。ついでにエンペドクレスの名に触れても、その後彼につい
て何も調べようとしなかったということも書き添えておく。

我が田舎町に庄司薫氏が講演にやって来たことがあって、その時に一
連の“薫君シリーズ”のタイトルの由来を説明したのだが、要するに
『赤頭巾ちゃん気をつけて』『さよなら快傑黒頭巾』『白鳥の歌なん
か聞こえない』『ぼくの大好きな青髭』はそれぞれ“朱雀”“玄武”
“白虎”“青竜”から採ったのだと言っていた。

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