藝話§外壁の“とっくり蜂の巣”の造形

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↑ろくろを回さない限り人間様は手作業でこんな正確な円は作れません

朝っぱら、居間の掃出し窓のあたりで同居人が何やら騒いでいた。

何事ならんと行ってみると、泥で作られたきれいで小さい壷のような
巣が完成していた。大昔に昆虫図鑑で見た記憶があって、蜂か何かが
ていねいに作ったものだろうということはすぐわかった。

ネット検索で調べると、はたして“とっくり蜂(トックリバチ)”の巣
らしいと判明。蜜蜂とは違って単独行動をする蜂らしく、轆轤なども
一切使わずに器用に巣を作るのである。写真を見ればわかると思うが
入口などはほとんど真円のように見える。

別の場所だったら放置しているところだが、頻繁に出入りして洗濯物
を干すような場所なので申し訳ないと思いつつ撤去することにした。
箸でこそげ落とす前に触ってみると、窯に入れる寸前の陶器のように
しっかり乾いて硬化していた。うまいこと壁からはずして中を見ると
小さな卵が一つだけぶら下がっていた。一つの巣に卵は一つしか産み
落とさないのだ。親が麻酔を使って餌を獲ってきて生きたまま保存。
幼虫は羽化するまで新鮮な生餌を食い繋いでいく。親蜂は生餌を入れ
ると入口に蓋をして任務完了、これ以上世話はしない。というわけで
もう少し気がつくのが遅かったら壷の中に餌を運び入れて蓋まで完成
するところだったのである。

材料を運ぶのに20往復ほどもすれば完成だと知って、また驚く。

勝手な都合で巣を撤去したことは本当に申し訳ないことではあるが、
久しぶりに巧まずして創造された自然の造形美に驚嘆し、束の間の鑑
賞を楽しんだのだった。

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