藝話§命短し恋せよ乙女

『のだめカンタービレ』の中で、オクレール先生が、既にプロで活動
している中国人ピアニストに、料理の中身が何なのか答えさせる件が
あった。彼女は「音楽とは関係ない」と反駁していたが……。

彼女はオクレール先生が言わんとしていることを少しづつではあるが
理解するようになっていったと思われるのだ。

こちらはちょっと前の実話。……アメリカの超有名音楽学校に留学し
た某女流ヴァイオリン弾きが、最初に先生から「いっぱい本を読んで
あちこちの美術館にも通いなさい」と言われた時に「それが、音楽と
どういう関係があるのか」と、まるで理解できなかったらしいエピソ
ードもある。

そしてつい最近見た民放ドキュメンタリーでは、パリ音楽院にピアノ
で留学している女性にボーイフレンドができた。日本の両親は一言、
「恋愛は音楽の邪魔だから、ピアノだけに集中しろ」だそうである。

……はてさて、そんなこともコントロールできずに、おもしろい音楽
が演奏できるものかと思う。単に五線譜を見てそれだけで鍵盤を撫で
回すのだったら、今時小学生のお子様でもできることである。我々が
聴きたいのは“その人の音楽”なのだ。

偉大な作品を残した作曲家が、どれほどの経験をして五線譜を埋めて
いったのかということに思い至らない人間は音楽を奏でる資格も能力
も持ってなどいない。今時、そんなことも顧ることもないような人間
が音楽をどうこうしようなどとは片腹痛い。

演奏するために必要な技術の会得は第一義であるにしても、それだけ
で良しとし、それだけしか要求されないのだったら、おフランスまで
留学することがドブに金を投げ込んでいるようなものだということに
彼女も彼女の両親も気づいていないというおめでたさなのである。

【去年の今日】音話§カール・ベーム没後四半世紀

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック