中話§一年前は台北にいたさー[十壱]諸神黄昏

《承前》

予想していた以上に、國家交響樂團が質の高い演奏を繰り広げたのは
驚きだった。簡文彬の指揮姿は、ややせっかち気味なところが見受け
られるが、音楽にそういう面は感じられない……と記憶。

弦楽器や管楽器の音色に“亜細亜的”な癖のようなものがあるかと思
っていたが、そんなことはなかった。メンバーには日本人奏者2人に
欧米人もいたりする。癖のようなものかどうかはわからぬが、三幕の
ワルハラ崩壊の場面におけるパーカッションの派手な鳴らし方には、
何がなし中華的なる響きを見出してしまい微苦笑した。

舞台上のオーケストラであるが、8本のコントラバスと6台のハープ
を左右半分づつに分けて演奏させたという不可思議な光景があった。
日本に戻ってプロに話したら“そりゃおかしい”と一言だけ。確かに
わざわざ分ける必要はないし、コントラバスなどは音がまとまりきれ
ずに散ってしまっていた。明らかなアイデア倒れである。

奇妙だったのは、海外からの歌手達全員が暗譜で歌っていたのに、台
湾人歌手の全員が譜面台を前にして歌ったことで、彼らが出入りをす
るごとに譜面台の処理をするスタッフが現れたりしたのだ。このあた
りの“温度差”のようなものが実に不可解なものに感じられた。

同じことが日本で行なわれれば、さすがに日本人歌手の皆さんは譜面
台など持ち込むような恥ずかしいことはしないであろう。ひょっとす
ると台湾では、クラシック歌手の存在はまだまだ“偉い”ものだった
りするのだろうか。それをまた本人達も意識しているということか。
……それほどのものではなかったのであるが。

というわけで、オーケストラは大健闘。歌手では、ハーゲンを歌った
ハンス・ペーター・ケーニヒの朗々たる歌声が、貧弱な合唱を完全に
圧倒して実力を示したのだった。
                            <続く>
追記:台湾関連の記事をぽてぽてと巡回していたら、ほぼ同時期に旅行されていた台湾フリークさんのページがあったのでご参考まで。

【去年の今日】来話§1993年ベルリン・ドイツ・オペラ(Ⅰ)

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