人話§歌舞伎役者伝[2]~中村吉之丞~

『傾城反魂香』の北の方、お軽勘平のおかや、そして『牡丹燈籠』の
お米・・・最近観た吉之丞の役である。

時代物、世話物を問わず、婆さん役といえば吉之丞しか観ていないよ
うな気がするくらいである。経験に裏打ちされた演技はまさに年の功
で、吉之丞以外に誰がこういう役を演じられるのだろうか。

少し前のNHKの伝統芸能番組で、名脇役だった尾上多賀之丞の映像
が流されたが、それはもう見事なものだったと感服した。吉之丞もま
たこういった役者の系譜に属しているのだなと思う。

舞台にいるだけで場の雰囲気を作り上げてしまう数少ない本当に貴重
な役者である。そう思って見渡してみると、中堅の世代で吉之丞に連
なっていく役者がいるだろうかと思ってしまう。

歌舞伎が看板役者が主役を存分に演じるだけでは成り立たず、多くの
脇役や端役によって引き立てられるというバランスで保たれていると
いうことに今更ながら気づかされるのだった。
                            [続く]

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この記事へのコメント

2007年11月26日 17:07
少し前まで看板役者だった歌手達が脇役に廻るというようにヨーロッパ歌劇場はこれまではその辺がうまく機能していました。多くの大劇場がアンサンブル劇場でなくなった今、その良さがなくなってきているように思います。
2007年11月26日 17:38
オペラでも歌舞伎でも、脇役という
存在は、常に不足気味であるような
気がします。

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