騰話§見ている湯は沸かない のですらし

見ている湯は沸かない

……同居人がしばしば口にする“格言”である。

昔々、大学の湯沸室でガスコンロでなかなか沸かないやかんを前に、
友達と話をしていた時に思わず口をついて出たのだという。検索して
みると、何ということか物理学の世界では有名な言葉なのであった。
典型的文系アナログ族の同居人が物理学の書籍を読でんでいたはずも
なく、単なる偶然の一致であるのは間違いなさそうである。

それはともかく、確かに“見ている湯は沸かない”のだ。10度ほどの
水が一瞬のうちに50度とかまで熱くなるはずもなく、緩やかなスロー
プを徐々に温度が上がっていくのである。それを5秒や10秒観察した
程度では湯が沸くはずもないということなのだ。

もう一つ同居人がしばしば口にするお言葉に……

普段読まない人が買うからベストセラー

という、当たり前といえば当たり前なものがある。これは、いかなる
“ブーム”にもあてはまる便利な言葉で、それこそ10年ほど前の大相
撲の盛況は、普段相撲など見ない人達が“若貴”に群がったがゆえで
あるし、近々では『のだめカンタービレ』を読んだ人達がクラシック
のコンサートに殺到するということもあった。

そうして群がった人達は、ベストセラーではない本を読むことはない
し、若貴が引退してしまえば国技館に行くこともテレビ中継を見るこ
ともない。あと一年ほどで『のだめカンタービレ』も完結するだろう
から、そういう人達は“次のブーム”を目指すのであろう。

ブームという目の粗い篩(ふるい)は抜けられても、その次に細かい篩
の目を潜り抜けられる人は少ない。

【ひだまりのお話の原点】

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