人話§歌舞伎役者伝[9]~市川亀治郎~

“才気”が、顔をして衣装をつけて歩いているような存在である。

もう10年も前だろうか、同居人とテレビを見ていたら、他愛のないゲ
ーム番組に、当時の三之助(辰之助、菊之助、新之助)と市川亀治郎
4人が出演していた。何というか、要するに4人の中では飛び抜けて
頭のいい存在だということが端々に見て取れた。

そうなのかと思ってしばらくしたら、若手の歌舞伎とかで観る機会が
増えてきて、自分の中でもどんどん存在が大きくなっていた。それに
何より踊りがうまい。若手の中ではピカ一だろう。本人もそう思って
いるから、踊っている端々にチラリと“どうだ!”という表情が窺え
るのは、彼の自信そのものなのだ。

ここ2、3年の間に、蜷川幸雄演出の『十二夜』あるいは、三谷幸喜
の『決闘! 高田馬場』といった新作歌舞伎あたりでの、計算された
はじけた演技には、いかにも彼らしいものが見え隠れしていた。

自覚があるとかその気であるとか、単純に言えばそういうことだろう
とは思うが、彼だったら何をやってくれるだろうという期待感で劇場
に足を運ばせるのである。

今は才気が全面に出ているが、いずれは外と中のバランスが塩梅よく
とれていって貴重な役者になってくれるだろうと期待している。
                            [続く]

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