悼話§N・ベススメルトノワさん(バレリーナ)

以前は“ベスメルトノワ”と言われていたような気がする。ボリショ
イのバレエ監督だったユーリ・グリゴローヴィチは夫である。

彼女を観たのは1983年の秋。ボリショイ・バレエ団が来日する直前の
9月に大韓航空機が、当時のソ連空軍によってサハリン沖で撃墜され
ていた。領空侵犯という理由であったが、問答無用でミサイルを発射
したようなところもあって、ソ連への非難が巻き起こっていた。

それであるがゆえに、来日公演におけるホール内の空気はどことなく
冷え冷えとした空気で、バレエ団にとっては気の毒な状況だった。

バレエを観始めてようやく2年ほど。初めての『白鳥の湖』だったが
そういうこともあって記憶に留まっている部分は少ない。

バレエ鑑賞歴の長い同居人によれば、当日のオデットはセメニャカと
いうソリストが踊ったのだが、どういう事情なのかわからないのだが
セメニャカに代わって黒鳥をベスメルトノワが踊ったのだという。

同居人「人民芸術家が踊っていたなんて気がつかなかった」というこ
とで、いかに当時のソ連全体を政治力が覆いつくしていたかがわかる
エピソードである。

個人的にも不思議だと思ったのは、三幕での各国の踊りのダンサーま
でがトゥシューズで踊っていたことで、常識的にもキャラクターシュ
ーズで踊るべきものだったのではと腑に落ちなかった。

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