五話§東京オリンピック~重量挙げ~

[承前]

かくもマイナーな競技が注目を浴びたのは、三宅義信が金メダルを獲
得したからである。

それはともかく競技を見ればなかなかにおもしろい。選手同士の駆け
引きもあって、自分が持ち上げるバーベルと相手の持ち上げる重量が
どうなるのかというあたりで、それで博打を打つのかどうか……。

この時の記憶としては三宅義信ともう一人、ヘビー級の金メダリスト
であるレオニード・ジャボチンスキーの名を挙げなくてはならない。

彼に関する最初の記憶は重量挙げの時ではなく、開会式の行進の時で
ある。旗手を務めたジャボチンスキーはというと、旗のポールを片手
で持ち、腕を真っ直ぐ前に差し出したまま行進したのである。

片手で行進した選手は何人かいたように記憶しているが、腕を真っ直
ぐ差し出して行進したのは彼一人だったと思う。そして200kgなど
という想像を絶する重さの、持ち手が逆Uの字にしなりきったバーベ
ルを軽々と持ち上げて見せたのだった。

それにしても一人の人間が150kgみたいな重さを気合い一発で差し
上げるという、単純かつ実に根源的な競技ではないか。

ところで、東京オリンピックの重量挙げの会場になったのは、スポー
ツ施設ではなく、昔の名称でいうと“渋谷公会堂”で行なわれた。渋
谷の公園坂を登りきった左側、NHKの手前の建物である。
                            [続く]

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