五話§東京オリンピック~マラソン~

[承前]

たまに車で甲州街道を走ることがある。東京オリンピックのマラソン
折り返し地点が飛田給の旧関東村のあたりにあって、標識で確認でき
る。新宿から向かうと、中央道の高架をくぐった先、味の素スタジア
ムの手前にその標識はある。

42.195kmという距離がいかばかりのものか、10歳の子供には理解の範
疇を超えていた。その時はどこかに出かけていて、たまたま入った中
華料理屋のテレビで選手が走っているのを見た。ラーメンを食べて家
に戻ったらまだ走っていた。

ローマ・オリンピックの時に裸足で走っていたアベベは、ちゃんと競
技用の靴を履いて出場した。そして淡々と、かつ楽々と走り、独走で
ゴールテープを切った直後、係員がかけようとするバスタオルを尻目
にクールダウンの体操を始めたが、それには眼を剥いたのだった。

第2位で国立競技場のゲートに現れたのは円谷幸吉だった。既に精根
尽き果てていた円谷は、すぐ背後に迫っていたイギリスのヒートリー
に為す術もなく抜かれ、倒れこむように3位でゴールインした。ゴー
ルした後の円谷が放心して夢遊病者のように漂っていたのが印象に残
っている。
                            [続く]

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