幻話§冨田勲『月の光』ドビュッシー

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冨田勲がムーグシンセサイザーをオペレートして“創った”最初のア
ルバムは、ドビュッシーのピアノ曲のシンセサイザー化だった。

LP時代に買い、プレイヤーの針を下ろしたとたんにひっくり返った
記憶が甦る。冨田勲本人がライナーノートで語っていたのだが、彼が
購入したシンセサイザーは、まさに初期中の初期で、写真を見ればわ
かるが、電話の交換台に夥しいコードがぶら下がっているというよう
な代物だった。それで何が何だかわからず闇雲にいじくり回してコン
トロールできるようになったということだった。苦労のほど、いかば
かりだったか想像もできない。

収録されているのは以下の曲。

1.雪は踊っている(『子供の領分』第4曲)
2.夢
3.雨の庭(『版画』第3曲)
4.月の光(『ベルガマスク』組曲第3曲)
5.アラベスク第1番
6.沈める寺院(『前奏曲集第1巻』第10曲)
7.パスピエ(『ベルガマスク』組曲第4曲)
8.亜麻色の髪の乙女(『前奏曲集第1巻』第8曲)
9.ゴリウォーグのケークウォーク(『子供の領分』第6曲)
10. 雪の上の足跡(『前奏曲集第1巻』第6曲)

どの曲も冨田勲らしいセンスに満ちた音色でできていて、その微妙な
綾織の見事さは、彼の苦心と感性による精華なのである。皮肉屋のド
ビュッシーもこれを聴いたら黙り込んでしまうのではなかろうかなど
と想像したこともある。

どれか一曲というのは難しい注文だが、迷った揚句『雪の上の足跡』
なんかどうだろう。

残念だったのは、RCAと契約して制作する予定になっていたはずの
『春の祭典』が実現しなかったことである。かなり楽しみにしていた
のだが一向に発売される気配もなく、いつの間にか立ち消えになって
しまっていたようなのだ。著作権取扱いの問題だったのだろうか。

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