楽話§リヒャルト・ワーグナー事始[13]

[承前]

1989年のウィーン国立歌劇場日本公演で、ようやく『パルジファル』
に“会う”ことができた。てっぺんの安いチケットが買えたので2回
観たが、案の定やっぱりというか、自分の理解の外の思想の作品だと
思ったのである。

その考えは今も変わっていないが、一応自分なりに感じたり考えたり
するようなことは、ほんの少しだができるようになってきているよう
だなとは思っている。

それにしてもと思い出すのは、オーケストラピットから立ち上ってき
た第一幕の前奏曲である。繊細な弦のアルペジオがまるで手に取るよ
うに見えたような気がして、ウィーンフィルの性能のまたある一面を
垣間見たような気がした。

タイトルロールはルネ・コロ。1987年の指環以来、それまで来るのを
厭っていた日本に足繁くやって来てはワーグナーの主要なヘルデン役
を歌ってくれた。それはあたかも伝道師のようなものだと言えなくも
ない。本人も、これほど歓迎されるとは思ってもいなかっただろう。

最後まで残ってしまったのは『さまよえるオランダ人』で、初期のオ
ペラを除いた、いわゆるバイロイト・レパートリーの中では最初の作
品というのは皮肉な話である。
                            [続く]

《クラシックのトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック