楽話§リヒャルト・ワーグナー事始[12]

[承前]

1987年に『ニーベルングの指環』の通しを観たことで、残る演目はあ
と2つ『さまよえるオランダ人』と『パルジファル』になった。それ
で『パルジファル』を初めて観ることになる1989年の前年、1988年
はミュンヘンの国立歌劇場が『マイスタージンガー』を持ってきた。

以前にも書いたのだが、まさにその当時考え得るベストの組み合わせ
の歌手で聴くことができた至福の公演だった。演出や舞台装置もひね
ったところはなく、マイスタージンガーのような楽劇ならば、それで
十分に楽しめるものだと思った。その舞台も今はなく、2005年の引越
し公演で観た新演出は、いかにも今風の舞台になってしまっていて、
この楽劇が本来持っている地域性のようなものがないがしろにされた
ように感じたのである。

もっとも、というか、2001年頃にドレスデンのゼンパーオパーで観た
『マイスタージンガー』は、1980年代にヴォルフガンク・ワーグナー
がバイロイトで上演したものを、そのまんま譲り受けた舞台だった。
それはそれで悪くはないのだが、天の邪鬼としてはずいぶんと緊張感
の欠落した上演だとも思った。例によってシュターツカペレがピット
から醸し出す音楽は絶品なのだったが……。
                            [続く]

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