飛話§ミュンヘンにリーム空港があった[下]

[承前]

リーム空港があまりに手狭になったので新空港が建設されたわけだが
2回目に利用した1991年は、まさに飽和状態も窮まったようで、発着
の遅延は常態化していたのである。

我々はその時、アルプスを越えてヴェローナに向かうために、50人乗
りのプロペラ機の出発を待っていた。既にして30分の遅延は決定して
いて、空港待合室は諦め半分の乗客でごった返していたのだ。

その時、にわかに搭乗カウンターの一つがにぎやかになった。何事か
とその方に視線を移すと、ドイツ人にしては相当に可憐な容姿の若い
お嬢さんが、係員に向かって必死に懇願を繰り返しているのである。
おそらくはタッチの差で乗り遅れたのだが、飛行機はまだ離陸をして
いないので何とかしてほしいという、そんな懇願のように見受けられ
た。遠眼にも涙目であるのがわかるようだった

彼女の必死な様子と容姿に“ほだされた”近くの紳士諸氏の何人かが
立ち上がって彼女の加勢をし始めた。カウンターの係員に“何とかし
てやれよ・・・”みたいな感じで、いい歳のおっさん達が彼女の加勢
をしているように見えた。何歳になろうが……

国籍を問わず、おっさんは美人に弱い・・・

結局はというか、残念ながら彼女の切なる願いは叶わなかったようで
待合室は元の喧騒に戻ったのである。それからほどなく我々の搭乗案
内が始まった。

かくして“我もまたアルカディアに!”とゲーテの顰にならっての、
スリル満点のアルプス越えを――陸路ではなく残念ながら空路で――
体験したというお話はこちら

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