憬話§このたびの旅[32]神々の黄昏<Ⅲ>

[承前]

……何という締まりのない終幕の舞台だろうか。

すっかり草臥れてしまったラインの少女達は『ラインの黄金』第二場
のとある街の一角でジークフリートを待っている……。誘惑したとこ
ろでジークフリートが指環を返してくれるはずもなく“しようがない
わねえ”てな風情で緊張感なく去っていく。

狩の休息の場面にはヌードの女性が登場したらしいが、舞台上手の端
におられたようで、我が席からは見えなかった。まあ、わざわざ全裸
を舞台に乗せる必然性もないだろうにとは思う。

かくしてジークフリートは死に至らしめられ、ワルハラの炎上とライ
ン河の氾濫で舞台は大団円を迎えるのだが、指環を奪取しようと試み
るハーゲンものんびりとブリュンヒルデの後を追いかけて、すっかり
興醒めさせてくれるし。というわけでここに至って今回の指環の形容
を思いついたのだった……

無関心リング

とでも言ったらよかろう。ここまで人間関係がスカスカで希薄としか
見えない舞台は珍しかろう。有機的なつながりをみとめることができ
なかったおかげで、結局というか個々の歌手に細かく言及できていな
い自分がいるという……これは今回観た7演目中の6演目で似たよう
な感触を持つ不毛な結果になったのである。

というわけで、歌手は――特にリンダ・ワトソンとシュテファン・グ
ールド
――健闘していたのだが、舞台からの印象が届くこと少なく、
だからハーゲンのハンス・ペーター・ケーニヒは、あの声にして感銘
を受けることがほとんどなかったのだ。

かくして指環はラインの少女に。市井の若いカップルが寄り添いなが
ら去っていこうというところで延々十数時間の四部作の幕が下りた。

我々二人は、くすぶり続けに続いた不完全燃焼な感情の落ち着き場所
を見出せないまま、すごすごとホテルに戻るのであった。

……残るは、後期の重量級3演目となった。
                            [続く]

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