憬話§このたびの旅[42]パルジファル<Ⅴ>

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↑この議場が第三幕の聖杯城

[承前]

第三幕冒頭は、空爆を受けて廃墟化したヴァーンフリート荘の裏庭で
始まった。避難してきた人達を甲斐甲斐しく世話するのは、夫婦のよ
うにも見えるグルネマンツとクンドリー。

舞台を囲むもう一つの祝祭劇場のプロセニアム・アーチがあることに
気がつく。そしてそのプロセニアムは裏側であり、観客である我々が
いつの間にか舞台上の存在になっている。

キリストを彷彿とさせるようなパルジファルが現れ、クンドリー達か
ら清めを受け、そして聖金曜日の音楽が流れる・・・神々しい美しさ
ではなく、むしろ人間の営みを祝福する美しさと言えるるだろうか。
そんな言い様のない柔らかな優しい音楽に心衝かれる。舞台の情景と
相俟って、これまでに聴いた最も美しい聖金曜日の音楽だった。

ダニエレ・ガッティはリハーサルの間、常に客席のスタッフとコンタ
クトを取って、オーケストラの音量やバランスのチェックを繰り返し
たということで、それが初年度の本番から実ったということだろう。

一幕に登場した聖堂のような聖杯城ではなく、1999年のドイツ再統一
まで使われていた旧西独のボンにあった連邦議会が現れてきた。ベル
リンの新しい連邦議会ではなく、ボンのというのはどういう時代的な
意図があるのか、そこまではつかみかねたままである。

第一幕の第一次世界大戦、第二幕の第二次世界大戦に続く、戦後の第
三幕の舞台が再統一前の時代だということを、我々のような日本人は
わからないが、ドイツ人をはじめとするヨーロッパの人達には、その
時代背景の意味が理解できるということなのだろうか。

そして大団円の驚き
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