憬話§このたびの旅[44]バイロイトの意義

[承前]

バイロイト音楽祭の存在意義とは何かといえば、至極単純だが……

舞台で上演されたものについて議論する

ということに尽きるような気がしている。そんな観点からすると、今
年の7演目中で議論するに足る舞台は、唯一『パルジファル』だけで
あったと思わざるを得ない。だから『パルジファル』の幕間で何人か
と話をする機会があった時に“昨日まではこういう話をすることすら
できないレベルの舞台だった。やっとバイロイトらしく議論の場が設
定された”ということを話したら、相手もそのことに気がついてくれ
たのだった。

普段から我々は、直前に観た舞台や音楽についてを幕間にあれこれと
話し合うのだが、今回最初の6演目の舞台については……

×

だとして、それ以上深く話すことはなく、同居人との会話はもっぱら
音楽の話に集中することになった。ただ“やっぱり、舞台についての
話がしたいよね”という無い物ねだりが始まってしまうのである。

『パルジファル』も土壇場でチケットが取れたからよかったものの、
これで当初予定の6演目だけだったら、真っ暗な思いでバイロイトを
後にしただろう。

今回、そんな6演目を通じて感じたことは、演出が気に入らないまま
観ていると、舞台上の歌手の印象がほとんどといっていいほど残らな
いということだった。だから、よほど主張のある声や演技で見せた歌
手の何人かしか記憶に残らなかったのだ。

かくして我々のバイロイト音楽祭も終わった。祝祭劇場から伸びる、
長くなだらかな坂道を下りながら、総監督退任の現場を振り返って、
この音楽祭の行く末がどうなるのかということを話しながら……。
                            [続く]

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↓こんな光景とも、またしばしのお別れである
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