憬話§このたびの旅[54]クス・クァルテット

[承前]

7月の紀尾井ホールで聴いた時にも同様なことを書いたが、これまで
シャープで尖鋭的なヤナ・クスのヴァイオリンの音色に、しなやかさ
とか優しさのようなものが加わって、より一層表現が深くなったよう
に感じた。だから音楽に応じて尖がってみたり丸みを帯びさせてみた
り、クス・クァルテット全体の表現の幅も広がったようである。

Kuss Quartett
Miklós Perényi

2008.09.02

Antonin Dvořák:Aus "Zypressen" Nr.1, 4 und 7
Joseph Haydn:Streichquartett G-Dur op.77/1

--PAUSE--

Franz Schubert:Streichquintett C-Dur D956


それは前半のドヴォルザークの“糸杉”やハイドンで色濃く感じられ
た。今年出産したと聞いたが、あるいはそういう経験が彼女が変化し
た理由の一つと言えるだろうか。

心配していたチェロのメンバー・チェンジだが、素人愛好家の耳には
違和感といったものを感じ取ることはできなかった。もちろん新しい
メンバーを選ぶに際して、彼らが慎重のうえにも慎重を重ねたことは
当然のことだろう。この先もうまく溶け込んでいってくれると期待し
ている。

懐かしやのミクロシュ・ペレーニのチェロが加わったシューベルトの
弦楽五重奏曲は、前半とは打って変わって輪郭のくっきりした濃厚な
音楽が醸しだされた。実演でこうした“化学変化”を目の当たりにす
るのはなかなかに楽しい経験である。
                            [続く]

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