迷話§やって来た列車に乗って[4]酒呑み話

[承前]

二十代の前半である。酒の味はわからなくても体力で呑めてしまう。
とは言いながら、知らない土地でへべれけというのもまずかろうと、
それなりに意識していたようである。

それでもビールを1本呑んだ後に、冷酒を五合ほど呑んだのは間違い
ない。酒がそれだけ進んだ理由はもう明らかで、日本海の幸のおかげ
である。

元旦だから店も休みだから出せるものは出しましょうてな勢いでとは
いいつつ、さすがに在庫は少なくてイカの刺身もほんのひとすすり。
気がつけば、ひっそりとした店のテレビでは紅白歌合戦が始まって、
一年もあと3時間で終わる刹那ではないか。

ほどよいつまみに酒が進み、そろそろ締めに寿司でも握ってもらう。
酔いも回っていたので何を握ってくれたのかまったく記憶にはないが
残った在庫の中から見繕って握ってくれた寿司のうまかったことよ。
すっかり満腹になってお勘定をお願いしたのだった。そして請求額は
というと何と驚くべきことに、たったの……

3500円

酔いで回る頭で考えても酒代程度ではなかろうかと思ったが、店主が
それでいいと言うものだから、言われたとおりに支払いを済ませると
店を出た。折しも小雪がちらつき始めた人通りの街を、再び市電に乗
ってホテルに戻り、さっさと風呂に入った後は物も言わずにベッドに
潜り込み、北陸の街・富山で年を越したのであった。
                            [続く]

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