維話§初めてのウィーン[8]国立歌劇場へ

[承前]

どういう経緯でこうなったのかはわからぬままに、国立歌劇場に出か
ける時間がやってきた。東京でのコンサート通いとは違って、少しは
洒落っ気を出してというつもりだったが、たいした格好ではないのが
初心者の悲しさである。

他の観客とともにぞろぞろと建物に入っていく。何かで読んだのだろ
うと思うが、コートをガルデローベに預けなくてはならないと頭の中
で復唱しつつ、金魚の糞よろしく他人様の後ろから同じように預けれ
ばいいのだという知恵くらいは持ち合わせている。

身軽になったところで平土間に入っていった。この日の席は、何と最
前列で眼の前すぐに指揮台が置かれている。普段からあまり前方の席
に座るわけではないので、さすがにちょっと戸惑ってしまった。

それがよりにもよって初めての海外オペラ鑑賞というタイミングで、
いくら予約してあてがわれた席にしても、ずいぶんだなあと思いつつ
席につき、読めもしないドイツ語のプログラム――確か18シリングと
記憶――をペラペラめくって出演者をチェックすると、ベルント・ヴ
ァイクルだのルチア・ポップと、10月に日本で歌った歌手が出演する
ではないか……。
                            [続く]

《海外旅行のトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック