悼話§カザルスホールさん(室内楽ホール)

来年3月で閉館するそうである。1986年のサントリーホール開館から
一年遅れで室内楽専用ホールとしてオープンしたが、あまりにも短い
運命になってしまった。

最初に聴きに行ったのは、オープニングシリーズの中の内田光子とイ
ギリス室内管弦楽団(ECO)の管楽器メンバーとの室内楽。オーボエ
のニール・ブラック、クラリネットのシーア・キングといった名手達
と演奏したモーツァルトの五重奏曲を今でも思い出す。

その後、アルデッティ弦楽四重奏団やギターの山下和仁によるバッハ
のヴァイオリン無伴奏パルティータとソナタ、白井光子のリーダーア
ーベント、ドミニク・ヴィスとクレマン・ジャヌカン・アンサンブル
といったコンサートなどなどが強く記憶に残っている。

ある意味では、自分達が最も精力的なコンサートゴーアーだった時代
でもあったということを改めて思い返していた。それだけにあっとい
う間にカザルスホールが駆け抜けていってしまったことに対して、何
をどう言ったらいいのかちょっと思いつかないままである。

一年前に“懐かし音楽会場”と題して、ホール自体の役割が終わった
り、建物自体がなくなったりということを書いたが、今度のカザルス
ホールの閉館は、経済状況に翻弄されてしまったバブルの仇花の哀し
い末路のように見えてしかたがない。

カザルスホール以降も、東京を中心にしていくつかの室内楽ホールが
誕生しているが、おそらくどこもペイしているとは思えず、私企業の
“ハコモノ”となっているような気がしないでもない。それにクラシ
ック音楽好きからしても、ホールばかりめったやたらと多くて中身が
伴っているのかと改めて問いかけたい。

付記:開館当初は20時開演を謳っていたカザルスホールだが、実際の
運営となると、終演間際になると聴衆が徐々に落ち着きを失って、終
わるが早いかそそくさとホールを後にするという印象だった。お茶の
水という立地にもかかわらず、結局は3年ほどで19時開演になってし
まったということもあった。


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