維話§初めてのウィーン[19]メリーウィドゥ

[承前]

明けて1月3日である。実にいい加減なことに、この日の夜はフォル
クスオパーで『メリーウィドゥ』を観ることになっている。これは、
12月28日に国立劇場連盟のチケット売場に行った時、公演予定表で見
つけて購入したのである。

ところがその買い方がいい加減で、実は予定表に記載されていた演目
がドイツ語の“Die lustige Witwe”とあったのを、うろ覚えで、ひ
ょっとしたら・・・じゃないのかな・・・という、かくも情けない根
拠を頼りに購入したのだった。

……はたして、その夜ゆるゆると劇場に出かけた。街の中心部からは
少しだけ市電に揺られて、たぶん少しばかり下世話な……下町という
表現が適切なのかどうか……地区に建つオペレッタの劇場に着いて、
さりげなくキョロキョロと見回すと、掲示物のどこかだかに辛うじて
英題を見つけてほっとしたのである。ほっとしたのはいいが、これま
た粗筋を何も知らないという能天気さだった……あな恐ろしや……。

ここでまた何も知らないオペレッタ初心者が腰を抜かしたのが、メラ
ニー・ホリデーが演じたヴァランシェンヌである。いかにも陽気なヤ
ンキー姐ちゃんという感じで、しかもそれが歌って踊っちゃうのだ。
“カンカン”なんかを豪快に踊りまくった時には「本当に歌手なの、
この人?」と眼が点になったのだった。いきなり世の中の広さを痛感
した、そんな一夜であった。その後シュトラウスやレハールのオペレ
ッタを楽しむまでにはもう少し時間が必要となる。

こうして結局は訳がわからないままに一週間ほどのウィーンの時間が
過ぎ去っていき、夜が明ければウィーンから離れるのである。
                            [続く]

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