競話§ブーニン現象~持て囃すメディア~[上]

自分の中で“メディアの煽りには要注意”という意識が芽生えるまで
にはずいぶんと時間がかかったし回り道もしたような気がする。

話は自分の趣味の領域に限られるが、もう20年以上も前のこと、その
メディアに踊らされた自分がいたのだ。1985年のショパンコンクール
のドキュメンタリーをNHKが放送したことがある。

番組中で、審査員でピアニストの園田高弘(故人)が口を滑らせた……

・・・間違いなく彼は天才です

……なる一言が“ブーニン現象”を生み出したのだった。スタニスラ
フ・ブーニンは、その時の第一位に輝いた当時ソ連の若手ピアニスト
で、我々が見たNHKのドキュメンタリーで演奏された、超快速テン
ポで演奏されたワルツが終わった時の聴衆の熱狂に驚いたのである。

園田高弘の一言と聴衆が熱狂する映像で勝負は決まった。この瞬間に
日本における“ブーニン・ブーム”が始まったのだった。そしてその
様子を見ていた我々もその渦に巻き込まれてしまったのだ。

それからほどなく――1986年早々だったろう――ブーニンの来日公演
が行なわれるという広告が打たれた。我々もブーニンの演奏会に行こ
うと発売日にチケットの購入を目指したが、そこまでのブームである
とまでは予想できず、あえなくチケットは瞬時に完売となったしまっ
たのである。
                            [続く]

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