復話§新国立劇場『ラインの黄金』[Ⅱ]

[承前]

舞台中央に置かれた映写機から光が発せられたところで、そのことを
忘れていることを思い出した。そこに座っている人物がヴォータンだ
ということも思い出した。本当に見事に忘れていたものだと妙なこと
に感心してしまう。

それにしてもオーケストラの音がうるさい。1階席がどう聴こえてい
るのかはわからないが、3階席だとピットからの音がストレートにや
ってくるので、ラインの少女が黄金を賛美する最後あたりのトランペ
ットが無闇にうるさくて閉口した。オーケストラのバランスに問題が
あるのではと感じたのだ。似たようなことは、この後にも何回か遭遇
している。

というわけで今回の『ラインの黄金』の音楽を聴きながら、バイロイ
のピットから湧き上がってくるアコースティックのユニークさが、
実にぜいたくなものだとしみじみと思い知ったのだった。とにもかく
にも、オーケストラがいくらフルパワーの音量を出しても“耳にうる
さい”ということがないのだから、これはもう奇跡的なことである。
しかも開放されているピットに負けず劣らず音楽が混濁するようなこ
ともない。

ということとは別に、指揮をしたダン・エッティンガー自体が不安定
だったような気もしている。そういえばピット奥中央にハープ6台が
並んだ様は壮観で、そういった位置のおかげがワルハラに上っていく
時のハープがはっきりと聴こえてきた。いつも“えっ、この程度?”
という感じでしか聴こえた記憶しかなかったのだ。
                            [続く]

《オペラのトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック