粉話§ピザはお好き?

物心ついて以降に知った食べ物がたくさんある。そんな世代に属して
いるわけなのだ。

“ピザ”を知ったのはいつのことだろうかと記憶の地曳き網を手繰り
寄せてみると、どう思い出しても十代の後半のことで、ひょっとした
ら東京に出てきて、ようやく初めて食べたのではなかろうかと……。

それでどのあたりの店だったかというと、渋谷の“ジロー”あたりに
行き着くようなのだ。さすがに昔の業態のジローは存在していないと
思われる。

それでまあサラミとか玉葱、トマトあたりがのったピザを食べて感心
したようなのだが、貧乏学生の身にしてみればそれは“贅沢”なわけ
で、しばしば口にできるはずもなかった。

それで次に目をつけたのは“S”という食べ放題のチェーン系ピザの
店だった。ここのピザはお世辞にもうまいとは言えず、腹を減らして
思い切りピザを食いまくる時に使った。それで何というか、しばらく
ピザを食べなくてもいいや……みたいになるという状況を意図的に作
り出すために利用していたのだ。

というあたりのピザが“正しいピザ”だったのかどうか、はなはだ怪
しいものがある。そういう意味で“正しいピザ”を食べたのは80年代
に入ってからのことで、青山の“S”という高級イタリア料理屋が、
すぐそばに“ピッツェリアS”という店を出して、そこが初めてであ
る。本店などは恐ろしくて入れないが、こっちはカジュアルで気軽な
店だったりする。

出てきたピザはそれまで食べたものよりもはるかに直径が大きくて、
最初は一瞬たじろいだが、石釜で焼かれたピザ皮は儚げに薄く、サク
サクとあっという間に胃の腑に収まってしまった。それ以降は分厚い
皮のピザには見向きもしなくなったのだ。

今でも月に一度くらいは食べたくなって、一番シンプルなマルゲリー
タで十分に満足するのであった。

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