顕話§ミュンヘン一週間[16]歌曲の夕べ

[承前]

ディートリヒ・フィッシャー=ディスカウのリーダーアーベントに行
った。ハイネが作詩したほうの『リーダークライス』と『詩人の恋』
というプログラムである。

ピアノ伴奏だが、予定されていたハルトムート・ヘルがキャンセル。
ピンチヒッターとして登場したのはダニエル・バレンボイム! ヨー
ロッパというエリアならではのダイナミックな変更にはさすがに度肝
を抜かれた。

実演でシューマンの歌曲を聴いたのは初めてのことだったので、記憶
はない。記憶にあるのは座った席が3列目という近さで、伴奏をする
バレンボイムのペダルを踏む足音がやたらとうるさかったことくらい
か。

ドイツやオーストリアの旅先でオペラやオーケストラ以外のリサイタ
ルの類を聴くのは初めてのことでどんなものかと思っていた。日本で
ディスカウのリサイタルを聴いた時の客席は異様なほどの緊張感に包
まれていて、咳(しわぶき)ひとつ立てるのもはばかられたのだったが
ミュンヘンの聴衆は、そんな様子を感じさせずもっと気軽にリラック
スしてという印象だった。

その後海外旅行の時でもリーダーアーベントに行く回数が増えたが、
その印象は大体似たような雰囲気だったりする。日本ほどの静寂では
ないのである。
                            [続く]

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