沙話§新橋演舞場『十二夜』再び

蜷川幸雄が演出した『十二夜』を観るのは、これで3度目。今回は、
新橋演舞場に舞台を移しての公演である。

ロンドン公演の後、東京では3度目の上演――演舞場では初めて――
になるが、これまでで一番楽しめた。

だいぶ台詞なども刈り込んだりしてすっきりしたことと、役者が役を
つかんできたこと、それと演舞場という“箱”に『十二夜』が合って
いたということなどなどが、楽しめた理由になるだろうか。

演舞場の舞台空間で観たことで、ようやく舞台装置に使われた“鏡”
の意味をきっちりと理解することができた。歌舞伎座の横に長い舞台
では鏡の効果が薄れてしまっていたのだ。それと今回観た席が3階の
最後列で俯瞰して観ることができたということが幸いしているのかも
しれない。

安藤英竹を演じる翫雀の演技が、いささか過剰かなと感じた以外は、
全体に良好なバランスのアンサンブルで舞台が進行していった。

見物はといえば麻阿役の亀治郎の演技を忘れることはできない。今回
は、抑制を効かせつつ“弾けて”いた。だからその対比で客席が沸く
のである。

芝居がはねたのは15時過ぎ。表に出たらニッサンのギャラリーが5月
一杯で閉鎖されていたということを知った。先月吉右衛門を観に行っ
た時には営業をしていたのに。

演舞場側の歩道から歌舞伎座を見たら“カウントダウン”が目に入っ
てしまった。設置されてこのかた歌舞伎座を出入りする時もスルーし
ていたのだが……。それこそ取り壊しの日がそんなに待ち遠しいもの
なのかとカウントダウンの存在を疎ましく感じているわけで。

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