拜話§バイロイト初詣[11]パルジファル[上]

[承前]

ホテルから祝祭劇場まではパラパラ程度の雨だったのが、劇場の建物
に入ったところで風も雨も強くなってしまった。ほんの思いつきで予
約したタクシーだったが、初日早々ラッキーなことであった。

緑の丘でタクシーを下りると、観客はみんな屋根の下に入っていて、
誰も前庭とかを“散策”などしてはいなかった。・・・寒くて今ひと
つ気分が乗らない。

……などといううちに開演時間は迫ってくるわけで、それでだがこの
日の一幕前にバルコニーのファンファーレがあったのかどうかという
記憶がない。二幕と三幕は雨も上がっていたのでファンファーレを聴
いたはずだが、これも記憶が……。

何せ初めての“神事”なものだから、とにかく皆様がたの後をくっつ
いて客席に向かった。本で読んだりしたとおり、通路などはなく客席
中央に向かってどんどん人で埋まっていく。申し訳程度の座席クッシ
ョンに背当ては板というシンプルさ。

客席空間を見上げ見回し“自分のいる場所”を確認する。ここは……

バイロイト祝祭劇場

……客席が人で一杯になる。それを見計らって照明が落ちる。左右の
出入り口扉の上にある小さな青緑の灯り以外は、正面の覆いの下のピ
ットから漏れてくる薄明のような光だけ。

そして気がつくと『パルジファル』第一幕の前奏曲が立ち上ってきた
のである。
                            [続く]

憬話§我々の“バイロイト音楽祭”2008.08

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