顧話§追想・若杉弘[Ⅱ]ワーグナー

[承前]

若杉弘との再会は1981年の二期会『ニュルンベルクのマイスタージン
ガー』ということになる。その後1983年の『ジークフリート』初演に
続いて、1986年が『ワルキューレ』の再演、1991年『神々の黄昏』ま
で、もっぱら彼の指揮でワーグナーを体験したのだった。

まだまだワーグナー経験が浅かった身にしてみれば、鳴り響いてくる
音楽を聴くだけで精一杯。ただ、周囲の“熱気”のようなものに釣ら
れて異様な興奮状態になったという記憶はある。そもそも1980年代に
なっても日本におけるワーグナー上演事情は好転してるわけでなく、
聴く側の渇望度が異様な熱気となって会場に充満していたのではない
かと想像している。

だから個人的には若杉のワーグナー上演がなかったらどうなっていた
だろうかと思うのだ。あるいはワーグナーの熱病に罹患することもな
く、だからバイロイトに詣でることもなかったのかも知れないとすら
考えるのである。今になって思い返してみると、ずいぶんとおっちょ
こちょいな所業だったと言わざるを得ない……。

若杉はその後、サントリーホールで東京都響を振って、2時間に短縮
こそしたが、ワーグナーの舞台作品の“抄”演奏会も行なっていて、
これにもほぼ一通り聴きに行っていることになる。
                            [続く]

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