書話§『ドイツ料理万歳!』

川口マーン惠子がものしたドイツ料理に関する新書だったが、いささ
か拍子抜けする内容。

彼女がいくらドイツ料理全般を語ろうと目論んでも、実際文章になっ
て出てきたものは、彼女が暮らしているシュトゥットガルトを中心と
したバーデン・ヴュルテンベルク州の食に関することになっている。

それくらいのことは、たとえ年に一度で一週間程度のドイツ旅行をし
ている程度でわかってしまうことである。それに残念ながら、あまり
ユーモアがあるとは思えない彼女の筆致では、とてもじゃないが……

ドイツ料理万歳!

……と思わせてくれることなどはなかった。彼女が広げたドイツ料理
という網の目があまりにも大き過ぎて、結局は内容が偏るような状況
に陥ってしまったのではと想像している。

それにずいぶんと勘違いのようなものも散見されていて、例えば日本
で一般的にビール純粋令と表記されているのに、わざわざ“ビール純
正令”と書いてみたり、読みながらフラストレーションが溜まってい
くことに気がつくのだった。

それでも最初のほうに書かれていた、近郊の葡萄農家が期間限定で開
いている“ベーゼン”と呼ばれる直営簡易ワインレストラン……これ
も一般的には“シュトラウスヴィルトシャフト”と呼ばれているらし
いが……で、ウィーンの“ホイリゲ”をさらに家族的営業形態にした
ものである。それが何やらうまそうではないか。

こういうところは、一介の旅行者ではなかなかたどり着くことのでき
ない“実は本当にぜいたく”な楽しみだったりするのだ。

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