石話§田舎のビル屋上のビアガーデンで

1960年代後半のこと。実家のあった田舎町には一軒の小さい“デパー
ト”が営業していた。木床には油がしみ込んでいて、独特な匂いが漂
っていたという記憶がある。

そのデパートが撤退しつつ、大通りの商店街が一斉に中層ビルに建て
変わり、デパートだったビルはショッピングセンターになった。その
屋上には――行く機会は一度もなかったが――ビアガーデンがあって
その当時流行りだしたエレキギターを手にしたお調子者が集まって、
ステージ演奏を繰り広げていた。我が実家から見上げる位置に、その
屋上があり、夕方になるといつも同じグループが馬鹿の一つ覚えで、
ローリングストーンズの“タイム・イズ・オン・マイ・サイド”を繰
り返し繰り返しがなり立てていた。ローリングストーンズが録音を出
したのが1964年だったかと思うが、その翌年には田舎町のあんちゃん
が歌っていたことになる。

今時だったら、録音が売り出されればあっという間に誰かが演奏する
だろうが、レコード以外に楽譜などもなかったので、誰かが必死にコ
ピーしていたのだろう。

それはともかく堂々とコピーを演奏していたのだから、JASRACなどな
いも同然の傍若無人がまかり通っていたおおらかな時代でもあった。
もう40年以上も前の話である。

【去年の今ごろ】憬話§このたびの旅[36]トリスタン<Ⅲ>

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