乖話§『赤い点』~ドイツ映画祭~<下>

[承前]

言いがかりはもう少し続く。

我が家は電気釜でご飯を炊かなくなって久しい。最初はフィスラー、
今は伊賀焼の土鍋である。それでわかるのだが、彼女が深鍋を借りて
“ピクニック”のための米を炊きだした時は驚いた。生温い研ぎ方も
ずいぶんだが、彼女が日本で電気釜で米を炊いている日常だったら、
炊き方も含めて相当に無理な話である。

自動車事故の件だが、我々日本人が慣れない左ハンドルで夜の田舎道
を運転するに関しては、細心の注意が必要なのは実感である。たまに
だが、見晴らしのきかないカーブの向こうからけっこうなスピードで
走ってくる車に肝を冷やすことがある。

まあ我々は、カーブの多い山道でめったなスピードを出して走りなど
しないが。あの程度の広さの道でも現地の人はけっこうなスピードで
走っていて平気である……とは、実感したことである。

ただあの“慰霊石”が置かれた事故現場の映像を観察していると、そ
れほど見通しが悪いわけでも、急カーブでもなさそうだったりもする
のだが、それは映像から見た限りの印象……。

実の両親の様子がアンバランスなことも微妙……。旦那は“ロハス”
まんまな風体なのに、妻の化粧の濃いこと。欧米暮らしが長い日本女
性にありがちなメイクで、個人的には明らかにミスマッチな組み合わ
せではないかと感じられた。

最後に……音楽があまりにも説明的に寄り添い過ぎてしまっていたよ
うに感じた。ついでに、毎度のことだが映画館の音声が過剰に大きい
のはもう少し何とかコントロールしてほしいものだが。

この映画を観て“感激した”という人と同居人が、つい先日会話をし
たのだが、作品を見る視点が明らかに違っていたことが実におもしろ
いことだと言っていた。ことほどに見方は人それぞれなのである。

長々と言いがかりを書き連ねたが、こういうことが気になる人間もい
るということなのである。ちなみに去年のミュンヘンで『赤い点』は
“アジアン映画祭”の一環として上映されていたようだ。同じ映画で
そんな風に境界を行き来する様子は興味深い。

というわけで、ストーリーを形作る“嘘”の膨大な積み重ねが我々を
ひたすら苛立たせたのだった。“こんなことは些細なこと……”とい
う言葉では片付かないレベルではないか。これでは日本的抒情を湛え
たと評判の映像も台無しである。卒業制作であっても有料上映されて
いるのだから、これくらい言いがかりつけてもバチは当たるまい……

細部にこそ神は宿る

《ドライブのトピックス一覧》

この記事へのコメント

【篠の風】
2009年10月23日 22:32
快刀乱麻のごとし。
はて、わたしゃどんな感想を書いていたんだろうと一瞬不安になりました。再び読み返してみて自分のいい加減さを確認。(汗) 誤字を発見したりもしたので直しておきました。
HIDAMARI
2009年10月24日 09:03
小姑根性で重箱の隅をつついているなどと思う人がいるかも知れませんが、こうまで不備が見えてしまっては、もう少し何とかならなかったのかと……そういう気持ちで文句をまとめてみたわけです。
かえる
2009年10月25日 15:05
こんにちは。
残念ながら、あまりにもお粗末なストーリーでしたね。
そうそう、実の両親の容貌(と軽い話し方も)もヘンでしたよね。
片や育て両親は昭和のホームドラマっぽい懐かしさで。
作品紹介に"深い感動をもたらす"と書かれていて、どこが?と思ったのですが、感動したという方もいらっしゃったんですね。
HIDAMARI
2009年10月25日 15:32
コメントをありがとうございます。いくつか感想ブログを読んでみましたが、感動された方が多かったようで、自分の観方が間違っているのだろうかと……前宣伝とか何も知らないまま観にいったので、あらかじめ貼られていたレッテルに惑わされなかったのかも知れません。
フランツ
2009年10月29日 06:19
TBありがとうございます。
私も全く同感です。
ドイツ映画祭2009に監督のシンパと思われる招待客がたくさんきていた中で、あまり自分のブログの中で批判するのはどうかと思い、無難なことだけを取り上げましたが、話の展開、映像で違和感を感じたことはまさしく、本文中で取り上げられているとおりです。
「ネクストジェネレーション」の短編の方が、むしろ優れていると思う作品が何作品もありました。
HIDAMARI
2009年10月29日 12:46
好意的な観方をしなくてはということは考えません。作品が“つくりもの”として共感できるかどうか……『赤い点』はつくりものとしては“赤点”でした。

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