映話§シネマ歌舞伎『らくだ』

花形歌舞伎がはねた後、勢いで演舞場近くの東劇に行き、去年の納涼
歌舞伎の『らくだ』を観た。芝居冒頭でお念仏を唱えていた婆さんは
相変わらず達者な小山三(今年が卒寿!)で本当に大したものである。

勘三郎と三津五郎の絶妙の掛け合いにプラスして、死人である“らく
だの馬”を演じた亀蔵の怪演に力を得て大笑いさせられたのだ。死人
に“かんかんのう”を踊らせようとする三津五郎が「踊りの家元!」
と自ら豪語してみたり、かんかんのうを踊られた大家の家の大騒動で
大家のカミさん(彌十郎)が玄関に転がり落ち、そこで木魚を叩いてい
た勘三郎が“素”になって笑い転げている。

他愛がないといえば、それ以外に言いようはないくらいに馬鹿馬鹿し
い芝居である。が、まあ『三五大切』のような別の意味で訳のわから
ない芝居の後に他愛なく笑うというのはある意味では正解だったと、
無理矢理にこじつけて楽しんだのだった。

『らくだ』だが、今年5月に新橋で吉右衛門の久六で観ているが、い
ささか自分自身の体躯を持て余しての窮屈な演技というのが吉右衛門
だった。それに比べると勘三郎と三津五郎達がテンポ感よく、突っ走
り、自分たちも楽しんでるという勢いが劇場空間全体をも巻き込んで
しまっていたように感じられたのだ。まあ、納涼ということで、あれ
くらいの羽目ははずしてもいいだろう。

【去年の今日】憬話§このたびの旅[56]C.プレガルディエン

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック