冬話§蕎麦屋で“蕎麦湯豆腐”と酒

仕事で中途半端な時間になってしまった先週のこと、少し足を伸ばし
て酒がてら、更科系の店まで蕎麦を手繰りに行った。

ビールの中瓶を頼んで御品書を眺める。この店に何品かあるお気に入
りから、迷わず“蕎麦湯豆腐”と蕎麦味噌のもろきゅうを注文した。

ほどなく蕎麦湯を張った器に浮いた豆腐が四切れ、下から固形燃料で
温められている。箸で食べやすい大きさにして口に運ぶ。こっくりと
した蕎麦湯のおかげで、豆腐にひと味が加わってすこぶるうまい。

家で頻繁に蕎麦を茹でるのだったら蕎麦湯豆腐をつくってみたいとこ
ろだが、蕎麦を茹でるタイミングとか考えると難しいかな。

ビールの中瓶など10分足らずで空いてしまい、日本酒を二合もらう。
いつのまにか蕎麦味噌もろきゅうも届いて、ささやかに日本酒を呑む
贅沢を楽しむのである。

表に出れば寒空だからと、締めに頼んだのは玉子とじ蕎麦。熱い丼が
来たところで一口残った日本酒をキュっと呑み干して蕎麦に取り掛か
る。

焼海苔が3枚ほど浮かしてあるが、厚手なおかげでくずれることなく
玉子や蕎麦と一緒に口に運ぶことができる。けちった海苔を使うと、
どんどんと溶けくずれてしまって見た目もよろしくないのだ。

歌舞伎に通いだして丸8年になるが、いまだ観ていない狂言の中での
有名どころに『直侍』というのがある。その蕎麦屋のシーンが印象的
だというのだが、季節も冬――『直侍』は春近い冬――で、ふとそん
なことも考えながらお勘定を済ませ、引き戸ガラリで駅へと急いだ。

【去年の今日】治話§指先に貼ったいわゆるバンドエイド

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