板話§十二月大歌舞伎夜の部~鼠小僧~

先週の土曜日に夜の部、日曜日に昼の部を観てきた。こういうスケジ
ュールはきつい。

一本目、双蝶々曲輪日記から『引窓』である。一言でというならコク
がないとでも言えるか。橋之助の濡髪は、姿は申し分なく見えるのだ
が、どこか浅さのようなものが感じられてしまい、印象が薄くなって
しまう。三津五郎や右之助が丁寧に演じても、芝居全体として見ると
物足りなさを覚えてしまうのだ。

二本目、芝翫が内孫外孫6人を従えての『雪傾城』であるが、あまり
見どころのある踊りではなかったというのが正直なところ。なので、
完全に御祝儀舞台として芝翫の幸福を祝うべきものだろう。とはいえ
年齢差を考えても孫6人の間に、技量の差のようなものが見えてきて
しまっているような気がする。

……いっそのこと、孫達の父親――勘三郎、福助、橋之助――3人が
袴後見でも務めれば御祝儀度がいや増して大きな話題になっただろう
と思うのだが、それは他愛のない冗談。

三本目に再演の野田版『鼠小僧』で、初演に比べると立ち回りなどに
刈り込まれた跡があり、それはそれですっきりしたと思う。立ち回り
が刈り込まれたのは勘三郎の運動量を考えてのことだろうと思うが、
自分とほぼ同世代の役者だと思えば無理からぬことと納得するのだ。

それで、改めて野田秀樹の手腕に素直に感心したのだ。ストーリーの
展開、人物描写とどれをとっても、昼の部のクドカンとは、明らかに
力量の差を感じるのである。

野田の鼠小僧にしても、とりあえず風呂敷は広げて大きな騒ぎが導入
部になったりするのだが、ストーリーが進むに従ってきちんと収斂し
ていくのが自然に行なわれていると感じるのである。

この先『鼠小僧』が再演される可能性は少なからずあるように思うが
はたしてスタンダードとして定着してくれるだろうか。そうあってほ
しいとは思うし、そうなる可能性も十分にあると思うのだが。

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