剣話§再『ジークフリート』新国立劇場

第一幕のオーケストラは最悪で、頭を抱えてしまった。音楽は動かな
いしコクがない。まったくワーグナーしていなかったのだ。

二幕、三幕と持ち直してはいったが、あれで満足とは言えない。去年
感じたようにエッティンガーはどうも今ひとつである。

歌手は全般的に健闘していたと言えるだろう。あまつさえ5回の公演
を中2日の間隔でタイトルロールを歌ったクリスティアン・フランツ
のペース配分には驚くべきものがあった。第一幕など声慣らしなのか
というくらいセーブしていて、不調ではないかと思ったくらいだった
が、3幕でブリュンヒルデが目覚めてからは、これが一幕の声と同じ
かと思わせるほどであった。こういう歌い方ができなければワーグナ
ー歌手とはいえないのだ。もちろん他の歌手にもあてはまる。

2008年のバイロイトでイゾルデを歌ったイレーネ・テオリンは、ヴィ
ブラートは相変わらずだったが、イゾルデよりはよほど真っ当に聴こ
えた。テオリンが成長したのか、それともイゾルデのほうがはるかに
難役であるということか……わからない。

去年だったかバイロイトでミーメを歌ったヴォルフガンク・シュミッ
トが新国でもミーメを的確に歌った。元々はヘルデン系で、2000年の
バイロイトでジークフリートを歌ったのを聴いている。キャラクター
という声ではないがパワフルさは健在で、ジークフリートと張り合う
様はおもしろい。

というわけで、今回もキース・ウォーナーの舞台を楽しんだ。特に、
二幕の秀逸さは印象深いものがある。宙乗りの小鳥との感傷的な対話
に続いて、ミーメの本音がテレビ画面から語られるという工夫には、
新演出の時も感心した記憶がある。

……そして、この先は勝手な想像。二幕の終わりに、小鳥が防火服に
着替えるという件、これはあるいはジークフリートの中のイメージと
して、小鳥はブリュンヒルデの分身というのは妄想に過ぎることだろ
うか。小鳥に憑依してメッセージを伝えるという使命を終えた分身は
ブリュンヒルデの本身へと戻っていく……かなり無理があるか。では
あるが、どうして小鳥が火を越えてブリュンヒルデの岩に向かってい
くのだろうという疑問は残るのだった。

・・・で、日付が変われば歌舞伎だぞっと。
                            [続く]

《憬話§我々の“バイロイト音楽祭”2008.08》

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