板話§二月大歌舞伎昼の部

オペラを観るのも歌舞伎を観るのも大変……。というわけで先代勘三
郎二十三回忌追善興行である。

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二月大歌舞伎昼の部の一本目は『爪王』という戸川幸夫の原作を平岩
弓枝脚色の舞踊。長唄の文句の陳腐さにはいささかゲンナリしたが、
勘太郎の狐、七之助の鷹という旬の素材の踊りに感心させられた。初
演が30年以上前のこと。

二つ目の『俊寛』は、実は好きではない。いわゆる観ていて辛い狂言
なのである。それはそれとして、立派な舞台であるのはもちろんのこ
とである。

赦免船に一番待ち焦がれていた俊寛が、結局は他の人間のために島に
残る道を選ぶ……遠ざかる船を岩の上から見送る勘三郎の俊寛は、最
後幕切れで、ふっとかすかに微笑でみせたのだった。それは、生前の
先代が“勘九郎さん、新演出はあたしが死んでからに願いますー”と
ダメ出しをした“笑み”なのだった。人それぞれの幕切れの表情があ
り、当代の笑みもまた取り残された俊寛が見せた諦念を強烈に表出し
ていたといえるだろう。

口上を挟んだ最後に『ぢいさんばあさん』を仁左衛門と玉三郎が、そ
こに勘三郎の下嶋甚右衛門が絡む舞台。相変わらず仁左衛門と玉三郎
の姿もよく、また仁左衛門の美濃部に執拗に絡む勘三郎の甚右衛門の
性悪さもまたいい味だった。

終演は16時前。明るい銀座を路地伝いにそぞろ歩いて冷かした後は、
新宿に戻っての軽い夕食。さすがに疲れた週末のオペラ&歌舞伎連荘
である。

正直に言えば、夜の部でなくてよかったというところ。夜の部の目玉
は『籠釣瓶花街酔醒』で、こんなの観ちゃったらやばかったというの
が本音。

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