薔話§カラヤン『ばらの騎士』クライバー

『ばらの騎士』の舞台を観たのは10回に満たないだろう。そのうちの
3回を、カルロス・クライバーがウィーンフィルを指揮した日本公演
で観ることができた。・・・最高の贅沢、そして至高の幸福。

ヘルベルト・フォン・カラヤンがザルツブルク音楽祭で彼にとっての
最後となる『ばらの騎士』を振ったのは1984年のこと。これは映像に
なっているし、それよりも早くFMで放送されたので当時貴重だった
メタルカセットテープに録音したのだ。

実演とはいえ、カラヤン率いるウィーンフィルの演奏は見事なもので
特に第三幕前奏曲のニュアンスが完璧に演奏されて精緻に満ち満ちた
オーケストラ表現に度肝を抜かれたのである。

という前振りをしつつカラヤンとクライバーの二人の『ばらの騎士』
解釈で際立って異なる部分についてひとくさりしてみる。

比較するところは、第三幕最後近くの三重唱の盛り上がっていくクラ
イマックス部分だが、カラヤンは楽譜にある速度指定どおり、2小節
ごとに少しずつテンポを落としていくという、当然といえば当然の、
泰然自若で一点の揺るぎもない演奏を展開していた。

こなたクライバーは、これが彼の真骨頂といえるのだが、楽譜の速度
指定を完全に無視して、逆にテンポを上げていくという“恐るべき”
指示を悪魔の微笑みとともに繰り出すのである。

・・・この2つの演奏を聴きながら、名人上手の手練手管のすごさを
まざまざと思い知ったのだった。

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